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ブログ番組「クラシック名曲アルバム」

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2009年元日開局。Youtubeにあるクラシック音楽の動画・録音を紹介。1日1曲、短くて聴きやすい名曲をお楽しみ下さい。

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歌曲集「白鳥の歌」より“セレナーデ”(シューベルト)

 「白鳥の歌」(Schwanengesang)は、「歌曲王」と呼ばれるオーストリアの作曲家、フランツ・シューベルト(Franz Schubert、1797-1828)の歌曲集です。「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」と並ぶシューベルトの三大歌曲集の1つですが、他の2つと違い、この「白鳥の歌」は彼の死後に出版社によって編集されたもので、物語的な一貫性・連続性はありません。「白鳥の歌」という題名も、出版者のハースリンガーが「白鳥は死ぬ時ひときわ美しく鳴く」という言い伝えから命名したものです。

 「白鳥の歌」は、レルシュタープ、ハイネ、ザイドルの3詩人による下記14曲から構成されています。いずれも彼の没年である1828年に作曲されました。
《レルシュタープの詩による曲》
 (1)愛の使い(Liebesbotschaft)
 (2)戦士の予感(Kriegers Ahnung)
 (3)春の憧れ(Frühlingssehnsucht)
 (4)セレナーデ(Ständchen)
《ハイネの詩による曲》
 (5)すみか(Aufenthalt)
 (6)遠い地にて(In der Ferne)
 (7)別れ(Abschied)
 (8)アトラス(Der Atlas)
 (9)彼女の肖像(Ihr Bild)
 (10)漁師の娘(Das Fischermädchen)
 (11)都会(Die Stadt)
 (12)海辺にて(Am Meer)
 (13)影法師(Der Doppelgänger)
《ザイドルの詩による曲》
 (14)鳩の使い(Die Taubenpost)

 これらの詩はいずれも「愛」を主題としていますが、「冬の旅」のような失恋による絶望ではなく、恋人の不在による自己の喪失感が意識されています。「冬の旅」が地理的にさすらうのに対し、「白鳥の歌」は内面的なさすらいが表現されます。

 本日はこの中から、第4曲「セレナーデ」(Ständchen)をお送りします。シューベルトの歌曲の中で最も有名なものの一つです。美しい旋律で恋人に対する切々たる思いを歌いあげます。マンドリンを模した伴奏も印象的です。
Leise flehen meine Lieder
Durch die Nacht zu dir;
In den stillen Hain hernieder,
Liebchen, komm zu mir!
 僕の願いをそっと歌に託して
 夜の静寂の中をあなたに届かせる
 静かなこの林の中へ降りてきてほしい、
 愛する人よ、ぼくと一緒になって!
Flüsternd schlanke Wipfel rauschen
In des Mondes Licht,
Des Verräters feindlich Lauschen
Fürchte, Holde, nicht!
 細い梢の先がささやくように
 月明かりの中で揺れている、
 誰か聞き耳を立てていやしないかと
 可愛い人よ、恐れることはない

(以下原詩略)
 ナイチンゲール(ウグイスの一種)の歌声が聞こえるね
 ああ!ナイチンゲールも求めている
 甘い切ない歌声を響かせながら
 僕に代って君を求めているのだ

 ナイチンゲールにも分かるのだ
 胸にうずく憧れを、愛の苦しみを。
 そして銀鈴をふるわすような声で
 心優しい人たちの琴線に触れてくる

 あなたも心をもっと開いてほしい
 愛する人よ、僕に耳を傾けて!
 身の震える思いで待っているのだから
 さあおいで、そして僕を幸せにして!

 映像は、ドイツのテノール歌手ペーター・シュライアー(Peter Schreier, 1935 - )による歌唱の録音です。

  

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【おすすめCD】
 シューベルト:白鳥の歌(試聴可能)
 録音史上最も傑出した歌手とされるドイツのバリトン、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau, 1925-)による「白鳥の歌」全14曲の歌唱を収録。
 ザ・ベスト・オブ・シューベルト(試聴可能)
 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウによる、シューベルト歌曲の歌唱を収録。「白鳥の歌」より“セレナーデ”ほか、「冬の旅」より“菩提樹”、「野ばら」「鱒」など有名曲を全22曲。

by asapykadan | 2011-02-26 14:44 | ドイツ歌曲

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