ブログ番組「クラシック名曲アルバム」

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2009年元日開局。Youtubeにあるクラシック音楽の動画・録音を紹介。1日1曲、短くて聴きやすい名曲をお楽しみ下さい。

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野薔薇(山田耕筰)

 本日は、日本歌曲「野薔薇」をご紹介します。

 
野ばら
野ばら
蝦夷地(えぞち)の野ばら
人こそ知らね
あふれさく
いろもうるはし
野のうばら
蝦夷地の野ばら

野ばら
野ばら
かしこき野ばら
神の御旨(みむね)を
あやまたぬ
曠野(あらの)の花に
知る教(おしえ)
かしこき野ばら

 「人こそ知らね」=人に知られず
 「うばら」=茨(いばら)、とげのある小木、野生のバラ。
 「神の御旨をあやまたぬ」=神の御心に背かない

 作詞者は、近代日本を代表する詩人の三木露風(みき・ろふう、1889-1964)です。
 露風は1916~1924年の間、北海道上磯町(現・北斗市)のトラピスト修道院で文学講師を務め、その間に洗礼を受けてカトリック教徒となりました。
c0191149_22403980.jpg 1917年(大正6年)の7月、三度目のトラピスト修道院訪問の途中、函館で院長と出会って一緒に山を越えました。その折りに道端で見た薔薇のことを書いたのが、上記の「賢き野ばら」の詩です。
 なお、露風が見た「野ばら」とは、北海道を代表するバラ科の花「ハマナス」(=写真)のことです。
 露風はこの詩を絵葉書に書いて山田耕筰に送り、耕筰が曲をつけて歌曲となりました。

 前奏の節分音は、汀にたゆたうさざ波の音を模しています。歌が始まると伴奏のさざ波のゆらぎが徐々に大きくなり、ついに大きな力となって汀に迫り来るような旋律となります。それからまた小さなゆらぎとなり、祈るような心境で歌い結びます。
 人に見られることもないのに、神の御心に沿って、荒れた野で、色美しく咲く…そんな野薔薇の姿を見ると、神の教えを知ったような気がして心洗われる…。静かで透明感のある、敬虔な祈りの歌です。

 映像は2010年のもので、ソプラノ歌手の小玉まことさんによる歌唱です。

  
【おすすめ録音】
 赤とんぼ 山田耕作作品集
 「野薔薇」ほか、「この道」「赤とんぼ」など、山田耕筰の代表的な歌曲を全58曲収録した2枚組CD。
 この道~山田耕作作品集
 ソプラノ歌手・藍川由美のソロCD。山田耕筰の原譜に立ち返り、作品の本来あるべき姿を研究して忠実に反映させた歌唱。他の歌手の歌唱を聴き慣れた人には違う曲に聞こえるほどである。「野薔薇」ほか、「赤とんぼ」「ペチカ」「砂山」など、山田耕筰の有名歌曲を24曲収録。
 野薔薇(試聴可能)
 MP3ダウンロード。バリトン歌手・山本健二さんの歌唱の録音。
【おすすめ楽譜】
 最新日本歌曲選集 日本歌曲名歌集(原調版) (最新・日本歌曲選集)
 山田耕筰「野薔薇」「かやの木山の」、瀧廉太郎「花」「荒城の月」など、日本歌曲の代表的な作品を68曲収録した楽譜。
 最新日本歌曲選集 山田耕作歌曲集(1) (最新・日本歌曲選集)
 「野薔薇」ほか、「からたちの花」「鐘が鳴ります」など、山田耕筰の代表的な歌曲を27曲収録した楽譜。

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by asapykadan | 2012-08-31 22:30 | 日本歌曲
 グスタフ・マーラー(Gustav Mahler、1860-1911)はオーストリア帝国領ボヘミア(現・チェコ)で生まれ、ウィーンで活躍したユダヤ系の音楽家です。ウィーン宮廷歌劇場(現・ウィーン国立歌劇場)の総監督やウィーン・フィルの首席指揮者を務めるなど、当代きっての名指揮者として活躍したほか、作曲家としても交響曲と歌曲の名作を数多く遺しています。

 彼の有名作品の1つに、交響曲「大地の歌(Das Lied von der Erde)」があります。
 この曲はマーラーの晩年、1908年夏に作曲されました。以下の全6楽章から成り、楽章毎にテノール(1,3,5楽章)とアルト(2,4,6楽章)の独唱が付いている管弦楽曲で、「交響曲」と「連作歌曲」の中間的な性格の作品といえます。詞の原詩は全て唐代の漢詩で、19世紀後半のヨーロッパで流行していた漢詩に魅せられたマーラーが、特に気に入った詩を選んだものです。
第1楽章:現世の哀愁に寄せる酒宴の歌  …李白「悲歌行」による。
第2楽章:秋に消え逝く者  …銭起「效古秋夜長」による?
第3楽章:青春について  …李白「宴陶家亭子」による。
第4楽章:美について  …李白「採蓮曲」による。
第5楽章:春に酔える者  …李白「春日酔起言志」による。
第6楽章:告別  …孟浩然「宿業師山房期丁大不至」及び王維「送別」による。
 マーラーが読んだのはハンス・ベートゲ訳の詩集「支那の笛」でしたが、訳詞をそのまま歌詞としたのではなく、マーラーが訳詞をさらに改変したため、原詩と照合できるものではありません。

 19世紀末のヨーロッパでは、あらゆる芸術分野で「死」をテーマとした作品が生み出され、また、東洋趣味の流行もありました。マーラーの「大地の歌」もまた、そうした時代に影響され、無常観、厭世観、別離の気分に満ちた芸術作品となっています。
 また、作曲前年の1907年には、娘の死、自身の心臓病宣告、さらには宮廷歌劇場指揮者の職を辞任に追い込まれるなど、マーラーは精神的に大きな打撃を受けました。彼は新天地アメリカで、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の指揮者に就任しています。そのような個人的状況も、この曲に反映したとされています。

 マーラーは、この曲を「交響曲第9番」と呼ぶことを恐れました。作曲家は第9交響曲を書いた後で死ぬというジンクスがあったためです。その結果、作品は「大地の歌」とだけ名づけられました。しかしこの曲はマーラーの生前に演奏されることはなく、マーラーの死後、1911年11月にミュンヘンにて、弟子のブルーノ・ワルターの指揮で初演されました。

 本日は、全曲演奏時間が1時間超にわたる長大な曲のうち、第3楽章「青春について」(Von der Jugend)をお送りします。唐代の酒宴の様子を歌った明るい歌で、旋律には「五音音階」が用いられ、東洋の楽曲の雰囲気を醸し出しています。全楽章のうち最も短く(演奏時間約3分)、素人にも比較的聴きやすい曲です。かつてウィスキーのCMに使われたこともあり、ご存じの方も多いかも知れません。
 なお、詞の中に「陶製の東屋」が登場しますが、これはベートゲの訳詩集では原詩の「陶家」(陶氏の家)が「陶器の家」と誤訳されていて、マーラーがそのまま使ってしまったものです。
Mitten in dem kleinen Teiche 小さな池の中に
Steht ein Pavillon aus grünem 白と緑の陶製の
Und aus weißem Porzellan. 東屋が建っている 

Wie der Rücken eines Tigers 硬玉の橋が
Wölbt die Brücke sich aus Jade 虎の背のような形で
Zu dem Pavillon hinüber. 東屋に向かっている

In dem Häuschen sitzen Freunde, 小さな家の中では
Schön gekleidet, trinken, plaudern, 友が美しく装ってお喋りをし
Manche schreiben Verse nieder. ある者は詩を書いている

Ihre seidnen Ärmel gleiten 彼らの着物は着崩れて
Rückwärts,ihre seidnen Mützen 紺の帽子は襟首に
Hocken lustig tief im Nacken. おかしくぶらさがっている

Auf des kleinen Teiches stiller 池の静かな水面には
Wasserfläche zeigt sich alles あたりの風景が
Wunderlich im Spiegelbilde. 趣深く映っている

Alles auf dem Kopfe stehend その水面に浮かぶ景色は
In dem Pavillon aus grünem 白と緑の東屋とともに
Und aus weißem Porzellan; 形を逆さまに映されている

Wie ein Halbmond steht die Brücke, 橋もまた三日月のように水面に浮かび
Umgekehrt der Bogen. 友は美しく装って酒を飲み
Freunde, Schön gekleidet, trinken, plaudern. お喋りをしている

 映像は、ユダヤ系アメリカ人のレナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein,1918-1990)の指揮による、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。独唱は20世紀後半のドイツオペラ界を代表するテノール歌手ルネ・コロ(René Kollo,1937-)。

  

【おすすめCD】
 マーラー:交響曲《大地の歌》(試聴可能)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。指揮者は初演時の指揮者であるブルーノ・ワルター。
 マーラー:大地の歌
 レナード・バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。偶数章はアルトでなく、20世紀録音史上最高のバリトン歌手であるディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ (Dietrich Fischer-Dieskau, 1925-2012)による名唱。
【おすすめ書籍】
 OGTー1217 マーラー 「大地の歌」 (Philharmonia miniature scores)
 「大地の歌」のスコア(総譜)。
 マーラー歌曲集
 マーラーの歌曲のうち、特に親しまれている18曲を厳選した楽譜。国内版では入手困難だったピアノ伴奏付きの曲集。「大地の歌」は、第2楽章「秋に寂しき者」・第3楽章「青春について」・第5楽章「春に酔える者」の3曲を収録。
 マーラー 大地の歌 (ウィーン・フィル世界の名曲)
 「大地の歌」のCD付ムック本。2001年刊。
 マーラーと世紀末ウィーン (岩波現代文庫)
 マーラー作品の魅力を、同時代人クリムト、ワーグナー、フロイトらの活動をも視野に入れ、世紀末ウィーンの文化史全体から捉えた書。

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by asapykadan | 2012-08-17 22:54 | その他声楽曲・歌曲