花(瀧廉太郎)
明治の西洋音楽黎明期における代表的な音楽家の一人である瀧廉太郎(1879-1903)によって作曲されました。「荒城の月」「箱根八里」と並び、瀧の歌曲でも広く親しまれている名曲の一つです。
この曲は1900(明治33)年に発表された歌曲集「四季」の第1曲で、本来のタイトルは「花盛り」でしたが、第3曲「月」、第4曲「雪」と合わせるために「花」とされました。しかしこの「四季」は、もっぱらこの「花」のみが有名になり、他の3曲は全く埋もれてしまい、歌われることもまずありません。
当時作られていた日本の歌曲の多くは教育用の学校唱歌で、質の高いものは少なく、また比較的程度の高いものは、西洋の歌曲に日本の歌詞を当てたものがほとんどでした。そこで、日本語の歌詞に作曲した本格的な歌曲を世に出すことによって日本歌曲の発展に寄与したい、と瀧は考えました。実際、この曲は西洋の模倣ではなく、純粋な日本的情緒に貫かれています。
この曲は日本初の合唱曲でもあり、速いテンポの二部形式で書かれ、ピアノ伴奏付きの女声二部合唱、もしくは女声二重唱で歌われます。
作詞は、詩人で国文学者の武島羽衣(たけしま・はごろも、1872-1967)によるものです。当時、日本に渡来して間もない漕艇(早慶レガッタ)が行われた春の隅田川の情景が歌われています。
春のうららの隅田川
のぼりくだりの船人が
櫂(かひ)のしづくも花と散る
ながめを何にたとふべき
見ずや あけぼの露浴びて
われにもの言ふ櫻木を
見ずや 夕ぐれ手をのべて
われさしまねく青柳を
錦おりなす長堤(ちょうてい)に
くるればのぼるおぼろ月
げに一刻も千金の
ながめを何にたとふべき
映像は、無伴奏女声三部合唱による演奏です。息のぴったりあった歌唱です。
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