歌劇「ポントの王ミトリダーテ」より“執念深い父がやってきて”(モーツァルト)
神童モーツァルトはこのオペラを、イタリア旅行中の1770年、わずか14歳の時に書き上げました。初演はミラノでモーツァルト自身の指揮によって行われ、大成功を収めたと言われています。
舞台は古代ギリシャの黒海沿岸に実在したポント国で、侵攻してくるローマと戦いつづけた国王ミトリダーテ・エウパトール6世(紀元前132-63年頃)が主人公です。
【あらすじ】
国王ミトリダーテは、若い許嫁のアスパージアを2人の息子ファルナーチェとシーファレに託して出征するが、息子達を試すために自分が戦死したという噂を流す。
兄ファルナーチェはアスパージアに結婚を迫るが拒否され、ローマにそそのかされて謀反を企て、父に忠誠を尽くそうとする弟シーファレと対立する。
国王ミトリダーテは長男の裏切りを怒り、またシーファレこそ許嫁の恋する相手と知る。
シーファレは父を助けようと出陣、負傷した王は彼の忠誠に王位とアスパージアを与え、長男をも許して息を引き取る。
本日は、全3幕のこのオペラから、第1幕第9場のファルナーチェのアリア「執念深い父がやってきて」(Venga pur, minacci e frema)をご紹介します。ファルナーチェがローマの護民官マルツィオと共謀して父への反逆を画策する時に歌う、壮大なアリアです。
Venga pur, minacci e frema 執念深い父がやってきて
l'implacabil genitore, 脅し怒りに震えるがよい。
al suo sdegno , al suo furore 父の侮辱と怒りに
questo cor non cederà. 私の心は屈服しないだろう。
Roma in me rispetti e tema 父は残酷さを控え、厳しさを控えて、
men feroce e men severo, 私のようにローマに敬意を払うべきだ。
più barbaro, o più fiero さもなければ、父の怒りが私を
l'ira sua mi renderà. より残忍に、より尊大にするだけだ。
このアリアは、作曲当時は男性のアルト・カストラートによって歌われていましたが、現在では女性のメゾソプラノ、または男性のカウンターテナーによって歌われています。
映像は、スウェーデンのメゾソプラノ歌手クリスティーナ・ハマルストレム(Kristina Hammarstrom)による歌唱の録音です。
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モーツァルト:歌劇《ポントの王ミトリダーテ》 [DVD]
2006年のザルツブルク音楽祭で「最も充実した公演」と賞された、マルク・ミンコフスキ指揮による歌劇「ポントの王ミトリダーテ」。
モーツァルト : 歌劇「ポントの王ミトリダーテ」全曲
1998年収録の3枚組CD。クリストフ・ルセ指揮。
オンブラ・マイ・フ/アンドレアス・ショル(試聴可能)
ドイツのカウンターテナー、アンドレアス・ショルのアルバム。「執念深い父がやってきて」「オンブラ・マイ・フ」など、有名アリアを全14曲収録。
Mitridate, Ré Di Ponto - "Venga Pur, Minacci E Frema" - Farnace's Aria, Act 1(試聴可能)。
MP3ダウンロード。ドイツのカウンターテナー、ヨッヘン・コヴァルスキー(Jochen Kowalski, 1954- )による歌唱の録音。