楽劇「タンホイザー」序曲(ワーグナー)
旧来の「歌劇」(opera)は序曲、アリア、重唱、合唱、間奏曲がそれぞれ断片として演奏されていましたが、ワーグナーはこの形式を拒み、音楽・詩歌・演劇等を統合して途切れのない一つの音楽作品へと発展させた「楽劇」(Music drama)とよばれる独特の様式を提唱しました。
さらに、こうした独自様式の、従来のオペラより大規模な自作の楽劇を上演する専門の劇場として、オーケストラ・ピットを舞台の下に押し込めて客席から見えないようにした特異な構造の「バイロイト祝祭劇場」(内部の写真はこちら)を建設しました。ここでは毎年夏にバイロイト音楽祭が催され、ワーグナーの楽劇が上演されます。
「タンホイザー」(Tannhäuser)は、彼の有名な楽劇作品の1つです。正式な名称は「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)といい、全3幕から成ります。中世ドイツの複数の伝説を元にしてワーグナーが台本を書き、1845年にドレスデンで初演されました。
【あらすじ】
舞台は13世紀初めのドイツ中部チューリンゲン地方。騎士で吟遊詩人であるタンホイザーは、愛欲の女神ヴェーヌスが棲む異界ヴェーヌスベルクで快楽の日々を送っていたが、反省して異界を脱出する。
故郷へ戻ったタンホイザーはヴァルトブルク城で行われた歌合戦に参加するが、そこで官能を称える歌を歌ったため、領主によって追放処分となり、懺悔のためローマへの巡礼の旅に出される。
しかしローマ教皇に「自分の杖に葉が生えない限り救済できない」と破門を言い渡され、タンホイザーは絶望して故郷へ戻る。
タンホイザーを愛する領主の娘エリーザベトが自分の命と引き換えに神に許しを乞うたことを知ったタンホイザーは、エリーザベトの亡骸に寄り添って息を引き取る。
そこへローマからの行列が緑に芽吹く教皇の杖を掲げて到着し、特赦が下りたことを告げる。
本日は、この楽劇でよく知られている「序曲」をお送りします。楽劇全体の内容を端的に表現しており、単独で演奏されることも多い名曲です。
映像は、20世紀の最も著名な指揮者の一人であるオーストリア人のヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan, 1908-1989年)の指揮による、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏の録音です。
【おすすめ!】
魅惑のオペラ 26 ワーグナー:タンホイザー (小学館DVD BOOK)
1989年、ジュゼッペ・シノーポリの指揮によりバイロイト祝祭劇場で行われた公演のライブ録画。ワーグナーの孫ヴォルフガング・ワーグナーの演出。対訳・解説本つきのDVD。
ワーグナー:タンホイザー 全曲(試聴可能)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による全曲演奏のCD。ゲオルグ・ショルティ指揮。
タンホイザー序曲~ワーグナー:管弦楽曲集(試聴可能)
「タンホイザー」ほか、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」や「さまよえるオランダ人」など、ワーグナー楽劇の序曲を7曲収録したCD。ゲオルグ・ショルティ指揮。
Tannhäuser: Overture(試聴可能)
MP3ダウンロード。マリス・ヤンソンス指揮、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団。
スコア ワーグナー 「タンホイザー」序曲 (Zen‐on score)
「タンホイザー序曲」のスコア(総譜)。