狂宴(ロッシーニ)
「セビリアの理髪師」や「ウィリアム・テル」などの有名なオペラを作曲したことで知られるイタリアの作曲家ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini, 1792-1868)は、37歳でオペラ作曲家を引退し、その後はサロン風の歌曲やピアノ曲の作曲に専念しました。
歌曲集「音楽の夜会」(Soirées musicales)はそうした時期の作品の1つで、全12曲から成ります。「狂宴」はその第4曲で、酒と女の楽しみを高らかに歌い上げた陽気な曲です。歌詞に登場する「バッカス」は、ローマ神話に登場する酒(ワイン)の神です。
Amiamo, cantiamo le donne e i liquor,
gradita e la vita fra Bacco ed Amor.
愛し合おう、歌おうじゃないか、女と酒、
バッカスと愛の神のはざまで、人生は愉快だ!
Se Amore ho nel core, ho il vin nella testa,
che gioia che festa, che amabile ardor.
心に愛あれば、頭に酒がまわる
何と楽しい、何という宴、何て素敵な活気だろう!
Amando, scherzando, trincando liquor,
m'avvampo, mi scampo da noie e dolor.
恋して、ふざけて、酒飲めば、
燃えて、苦悩は遠ざかる。
Cantiam, gradita e la vita fra Bacco ed Amor !
バッカスと愛の神のはざまで、人生は愉快だ!
Danziamo, cantiamo, alziamo il bicchier,
ridiam, sfidiam i tristi pensier!
踊って、歌って、盃を上げよう
笑って、悲しい思いに立ち向かおう!
Regina divina,la madre d'amor,
guiliva ravviva rinuova ogni cor.
崇高なる女王、愛の神の母君は
誰の心も、陽気に蘇らせる
Balzante, spumante con vivo bollor,
e il vino divino del mondo signor.
ふつふつと泡立ち、生き生きとたぎる、
美味い酒は、この世の主役。
Gia ballo traballo che odor, che vapor
si beva ribeva con sacro furor.
よろめき、ふらつき、何という匂い、何という熱気!
聖なる勢いで飲めや、飲め。
Cantiam, gradita e la vita fra Bacco ed Amor !
バッカスと愛の神のはざまで、人生は愉快だ!
映像は2009年のもので、ペルー人のテノール歌手フアン・ディエゴ・フローレス(Juan Diego Flórez 1973-)による歌唱の録音です。非常に情熱的な歌いぶりです。
【おすすめCD】
イタリア歌曲をうたう(試聴可能)
テノール歌手市原多朗のソロCD。「狂宴」ほか、「ガンジス川より陽は昇り」「最後の歌」など、イタリア歌曲の有名作品を15曲収録。
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